2学期に入り、絵本の読み聞かせの時間が始まりました。
二人のお母さんがボランティアで読んでくださいました。二人とも紙芝居でかちあうというめずらしいパターン。園長が俳句の群読と、ふたつの紙芝居の間に絵本を読みました。読んだ本は、魔術師とも言うべき絵本作家モーリス・センダックの名作中の名作『かいじゅうたちのいるところ』。よみながら、この絵本の力を感ぜずにはいられませんでした。子どもたちの食いつきがちがう!
なぜこの本を選んだかと言うと、映画化が決定しているからです。小説が映画になり、漫画がアニメになると、違和感を覚えた経験がどなたにもあるでしょう。イメージを損ねられた経験もあるかもしれません。当然です。与えられたかぎりある情報を膨らまし、立体化し、音声をつけるのは、自分のイマジネーションです。ひとと違っていてあたりまえ。この違いが、個(別)性と呼ばれるものです。
ネット上でちょっぴり宣伝フィルムをみましたが、相当いい感じでできているようです。よくできていればいるほど、自分のイメージが呑まれて、他人のイメージにすっかり乗っ取られてしまうおそれが強い。
だからこそ、原作である絵本を子どもたちの脳裏に刻みつけたかったのです。それで、頁をめくるのを相当ゆっくりにしました。絵本ではものの数分で読めるのが何十分もの映画になるのだから、行間を製作者の意図で埋めるような楽しいストーリーの挿入があるでしょう。だからこそ、「間(ま;行間部分、空白部分)」に個々の子どもたちが自分のイメージを十分充填できるようにと思ってのことです。そして子どもたちはそうしていたように見えます。やや間延びしそうな間に、ざわつくこともなく、目を輝かせていたからです。
私自身、いやな経験をしたことがあるのです。『銀河鉄道の夜』を、原作を読む前にアニメ映画を見てしまったのです。そのせいで、のちに原作を読む際「カンパネルラ」や「ジョバンニ」のイメージが、迷わず猫なのです。猫イメージから脱するのに数年はかかりました。
映画でイメージを固定される前に、どうか異次元空間サーファー、センダックの原作をどうぞご家族でお読みいただき、お一人お一人独自のイメージサーフインをお楽しみください!