怪談、肝試しの季節になりました。
「とけいがなりますボンボンボン こんなよなかにおきているのはだれだ」から始まるこの本は、おばけ絵本シリーズで有名なせなけいこさんの『ねないこだれだ』。せなさんの作品はどれも、ちぎり絵ならではの質感が魅力。
北欧では「3びきのやぎのがらがらどん」が、おふくろの味のように各家庭のお父さん独特の読み方があるそうですが、この本も、お父さんが声色を太くして、おばけのようにふるわせて、こどもをちょっぴり怖がらせる、それぞれのお父さん独自の読みが各家庭でくりひろげられているようです。
こどもが夜寝なくて、それどころか布団にさえ入らなくて困る、という経験はだれにでもあるでしょう。そんな時、この本が力を発揮します。「よなかはおばけのじかん」ですからね。
絵本によるトラウマなどと言ってネット上では話題になったようですが、そんなこと気にしなくてよいでしょう。たのしい思い出だけでなく、つらかったこと、悔しかったことなども心を豊かにします。子どもはその小さな胸に、おばけや妖怪、はたまた死ぬことにたいしてのおそれをひっそりと抱いているのです。何かをおそれるということは大切です。こわいものがなくなったとき、人間はそれじたいがおばけのようになってしまうからです。