ここには、この数週間の時の流れが、園庭のうつろいが、凝縮されています。
園庭を華やかにし、入園式を演出した桜の、愛らしい花びらが見えます。それと同じくらいの小さないちょうの若葉が見えます。いちょうの赤ちゃんです。花びらを舞わせた桜の青葉と並んで園のいちょうも柿の木も、ぽっそり緑の衣をまとい始めます。園庭が雲がかかったような桜色からはたと緑に変容する数日です。緑の衣は暑さにむかうごとに厚くなりまばゆくなっていきます。
そしてこの花びらと葉を支える土は、昨秋のいちょう・柿・桜の落ち葉が織りなされたじゅうたんです。
葉が重層をなし、生きた土になり、植物を豊かにし虫にすみかを与える。そんな自然を園庭にもたらすべく、昨秋より園庭の一部で葉を落としっぱなしにするという、ささやかな実験を試みたのです。春になって、その地面のようすが私を和ませるのでした。