桜のはなびらのじゅうたんが、うてなのじゅうたんにかわり、ちゅうりっぷが満開を過ぎるとはなみずきが高々と満開になり、藤棚がかすんだ雲のように淡く色づき始める、そんな春から初夏への足早なうつろいをみせる園庭です。
園児たちも激動の1か月を過ごしました。これまでは、なんだかんだ言っても、いうことを聞いてくれるお父さんお母さんにまもられてきましたが、そのあたたかなベースを一人で出て、決して自分の思い通りになんかならない無数の子どもたちの間に入っていくという、大冒険を新入児たちは体験しているのでした。
幼稚園は社会生活の第一歩。こういうと、親御さんの中には、すぐさま年少の子どもが、他の子どもと向き合って、友だち関係を結んでいくと考える人がいるかもしれません。また、そう考えて、そんなふうに友達と仲良くできるのか心配される方もいらっしゃることでしょう。
心配要りません。まずは、一人遊びです。それなら家にいるのと変わりないのではないか? いいえ、一人きりで一人遊びをするのと、大勢の中で一人遊びをするのでは全然違います。同じ空間にいるだけで、直接的にも間接的にも、影響関係が発生するのです。
この二人は、「二人で向かい合っている」という状態にはなっていません。二人で一緒に遊んでいるのでもありません。
しかし、一人の子がつなげた長い汽車のおもちゃにもう一人の子が引き寄せられています。この長い汽車は、年度当初でお互い知らないに等しい二人の子どもの、共通の興味をのせて走っているのです。この汽車が走っていく先の未来が見えるようです。
子どもたちは、いきなり「向き合って」言葉を交わして友達関係を結ぶのではありません。
遊びを仲立ちにしてつながるのです。
そして、実はおとな同士でも(例えば夫婦でも)、子どもと大人の間でも(例えば親子でも)、間に何もなく直接「向き合う」なんてことは、たいへんむつかしいことです。力関係のあるところに双方向性は開かれにくいからです。
年少組の4月、お片付けの時間にこんな協力関係がみられるとは。ひとつのかごを持ちあげるという、大人にとってはささいな営みの中に、二人の間にしかわからないバランス、力の伝わり、思いやり等々たいせつなことが体験されているのです。
そして、2歳児さんも、泣いて先生に抱っこされているばかりではなく、
遊びを仲立ちにしてつながっているではありませんか。
先生との親和的な関係を新たなベースとし、さまざまな形で人間関係を結んでいくのが園生活です。
その人間関係は決して、円満で良好な関係ばかりではありません。
車がぶつかり合うことさえ、関係の始まりなのです。